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照れ隠しだろうか。
俺からほんの少し離れて矢継ぎ早にそう告げる音芽が可愛くて、俺は思わず背後からギュッと彼女の細い腰を抱かずにはいられなくて。
「じゃあこれは?」
「ひゃ!」
そのままわざと耳元で低くささやけば、音芽が身体をビクッと跳ねさせて、慌てたように抗議するんだ。
「……ひゃっ、ヒャメに決まってるっ」
真っ赤になりながら上擦りまくりの声を誤魔化すようにダメだと吐き捨てる音芽が愛しすぎて、無意識に笑いが漏れてしまった。
「温和の意地悪っ」
そんな俺の様子に揶揄われたと思ったんだろう。
プンスカした様子で俺の腕を振り解いて早足で歩き始めた音芽から離れたくなくて、すぐさま彼女へ追いつくと、横に並ぶ。
そのことにもムッとしたんだろう。
大きな瞳で俺をキッ!と睨みつけてくるのまで可愛すぎるとか、反則だろ?
「音芽、機嫌直せよ」
むぅーっと口をへの字にしたまま歩く音芽に、俺は降参して謝った。
そんな俺の様子に、嬉しさを隠せないみたいに見上げて来た音芽が、何故か少しだけ不安そうに瞳を揺らせたことに、俺は不覚にも気づけなかったんだ。
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