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ーーーギリギリのところで電車に乗り込み、
もうすっかり乗客が少なくなった車内に座る。向かいの席には誰も座っていないため、
ガラス窓に俺の顔がぼんやり浮かんでいる
のが見える。
そこに写っていたのは子供の頃夢見たような
キラキラした自分じゃなくて、涙腺が緩くなって今にも泣き出しそうなおじさん。
後ろの夜景に俺の顔が馴染んで、まるで暗闇の中でただ迷っているような、哀しい人に
見えてきた。
ーーーきっと疲れているんだろうな、俺
ボーッとガラス窓を見ていると、ふと昔の事を思い出した。
仕事が安定していなかった頃、
「大丈夫、いつか大丈夫になる」
なんて思って頑張ってたっけ。そのおかげか
今仕事は安定している。
よくやった、俺。
「次は東京〜東京〜」
車内アナウンスが聞こえて、思い出に浸るのをやめた。
駅のホームから出ると、見慣れた都会の
夜景が見えた。
ーーーー相変わらず綺麗だなぁ…
人を吸い込んでいくような美しさ。
あ、吸い込まれたら俺透明になるんじゃね?
透明になるとか幽霊みたい。じゃあ東京幽霊だな!
なんでやねん!と独り漫才をして、俺は家へ
歩き始めた。
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