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白?黄色?オレンジ?彼女にはどの色にも見えた。しかしそれを体験した彼女は当時、そんなことよりも、目を閉じているのに「像」が映る衝撃で頭がいっぱいだった。
その光の塊をしばらく見つめていると、光はどこかへ行ってしまい、遠くの闇へ消えかけていた。
するとケェペロザンニは怒り口調で言い放った
「ぼーっとするんじゃないっ!早く追いかけるんだ!」
彼女はその声に驚き、その光を追いかけるよう「意識」を前に進めようとしてみた。案外それは簡単に出来るもんだった。
しばらく光を追いかけていると、暗闇の世界に「自分の妊娠を知った自分」が映し出された。彼女は当時の驚きを思い出した。
光の誘導を更に追いかけていくと、それからパノラマ写真のように、そこから今に至るまでの自分の体験が映し出されていった。
そしてH.S.で椅子に座ってこめかみを触られている自分が映った。
光は壁に当たったように止まった。
光が止まったことに彼女の不安感が急に高まり思わず「未来はないのか」と口に出した。
光は壁に「絵」描き始めたんだ。かのじょはその様子をまじまじと見ていた。
そして絵は完成した。
粗雑な絵だが内容は分かった。
それは……
自分が元気な赤ちゃんを抱いて喜んでいる姿だった。
5週間後、その「光の絵」に導かれたかのように、幾度の陣痛を乗り越え、彼女は元気な女の子を産んだ。
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