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1. 不思議なリング
「そんなに悲しんでくれるの?」
遠くで翔の声がした。
「やっぱり僕、死んで良かったんだよね」
――何言ってるのよ。そんな訳ないじゃない!
薄暗い部屋の隅。喪服姿のまま、泣き疲れてうつらうつらしていた亜樹は、そこでバッと目が覚めた。
今日はお葬式だった。夫、翔の。結婚二年目、まだまだ新婚なのに。
どうして翔みたいな良い人がこんなに早く逝ってしまわなければならないのか、亜樹は堪らなく理不尽に思う。泣き枯らしたはずの涙が再び頬を伝い、左手薬指のリングを濡らし弾いていく。
深い悲しみの中で、ふと亜樹は思い出していた。翔がこの指輪を買ってくれた日のこと……とてもとてもロマンチックでミステリアスな、あの日のことを――
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