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手渡された指輪をじっくりと眺めてみる。
ある物理学博士が長年の研究の末に生み出したのだというその指輪には、メビウスの輪のような捩れが優美に施されており、穏やかな光が湛えられている。
店主の話が本当かどうかは兎も角、指輪の素敵なデザインに惹かれたのは確かだった。値段にしても、オプションとしてサービスとの言葉通り、他より飛び抜けて高いというわけではなさそうだ。
亜樹は、これまでやり直したいと思うほどの大きな出来事に直面したこともなければ、増してや大好きな翔との別れの危機など想像したことすらない。この際、やり直し云々の機能は大した問題ではないのではないか。使わないなら使わないで、構わないのだ。
そう思い至るに十分なほど、その指輪は魅力的に感じられた。
翔も同じ気持ちだったらしい。彼は亜樹とのマリッジリングに、不思議な力が宿るというそれを選んでくれた。
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