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出会い
僕のジェット機は天高く上り、急下降して落ちた。次はまっすぐ飛ばそうと、羽の先を少し下げる。
早春の風にふかれながら、僕は趣味である紙飛行機作りの試行実験に没頭していた。
左右の対称性を確認し、昨日厚紙で作ったジェット機を軽く持つ。手首のスナップを軽くきかせるイメージを繰り返し、それをイメージ通りに手放した。
今度は低空飛行したジェット機を必死に追いかける。桜の匂いが追い風となって、ジェット機をより遠くへ飛ばしているようだった。
バランスを崩し、墜落しようとしたそれを何とか受け止め、もう一度前に投げ出す。
その単純な作業が、ただ楽しくてたまらなかった。
「危ない!」
誰かの声が頭に響いた。気づくと赤色の信号機が見える。視界の隅にある車が近づいてくるのがわかった。スローモーションに動く。
ーーひかれるーー
次の瞬間、今まで感じた事のない衝撃が全身を襲った。
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