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幸福な蜜月
私は確かにしあわせだった。
この修道院に入り、良く私の面倒を見てくれたあの人。私が父のように慕ったあの人と、毎日のように夜空を見上げて星を見ていた。
共に天文の研究をして、星の軌道を計算したり、宇宙がどの様な構造なのかの意見を共にかわしあった。
あの人は自分よりもずっと若輩で、未熟な私の話にもしっかりと耳を傾けて聞いてくれた。きっと誰よりも私を大切にしてくれていただろう。
そしてあの人は、ある日流星を追いかけて足を滑らせ、暗い海の底へと沈んだ。
それからの日々は、まるで私ではない他の誰かの人生のようだった。
こんなにも、自分が自分でいるのが難しいなんて。
このまま正体を失って、はやくあの人の元へと行きたい。
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