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『おかあさん、ただいま』
『……ただいま』
みどりの上の娘と洋史の息子が、中学校から家に帰ってきた。
この界隈の公立中学は、男子は詰襟の学ラン、女子はセーラー服である。
全国的には短いスカート丈が流行っているはずなのに、なぜかかなり長めだ。どうやら、この街の私立の女子校の制服がそうなので、その影響らしい。
『お帰りなさい……初めての中間テスト、どうやった?』
みどりが尋ねると、娘がとたんに苦虫を噛み潰したような顔になる。
息子が思わず、くすり、と笑う。
『……なによ、智くんっ、ちょっと自分は余裕やからってっ、ムカつく!』
娘がじろり、と息子を睨む。
『稍ちゃんが「数学、もう無理ぃー!」って言いようから、僕が特訓したったんやないか』
声変わりが始まった少し不安定な声で、息子が言い返す。言葉とは裏腹に、その顔はさもおかしげにニヤリと笑っている。
「あっ、おにいちゃん、おねえちゃん、おかえりー!」
幼稚園から帰ったあと、一人でリビングで遊んでいた下の娘が、転がるように駆け寄ってきた。
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