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番外二
「なぁ、アカネ。確かお前、母親がいたよな。」
「うん、何も言わずに出てきちゃったから心配してるかもな…僕のこと。」
家がなくなったあの日、僕は母の荷物になりたくない一心で走り出した。
隣の隣ぐらいの町がおじさんに出会ったところ。かなり移動したし、今はこんなマフィアのお屋敷にいるわけだから母が探し出せるはずがなかった。
「会いに行くか?」
「わかるの?母の居場所が。」
「情報なくしてマフィアは務まらない。俺たちの情報網を使えば活動している地域のことぐらい容易にわかる。で、会うか?」
「うん!会いたい!」
数日後、ロカリノから母の居場所がわかったと言われた。友人の家に寄せてもらっているようだ。
僕はロカリノと一緒にそこへ向かった。
母と会うのはかれこれ一年ぶりぐらいか。僕も母が心配だ。部屋のインターホンを押すと間もなく母が出てきた。
「え⁉アカネ!」
「久しぶり、お母さん。」
「久しぶり、じゃないわよ!心配したのよ?どうしてるの?」
どう…ねぇ。今の状況をどう説明すべきなのか僕にはわかりかねる。
いや、そもそもなんで僕が母の居場所が分かったのかとかそういうところは気にならないのだろうか。とんでもない情報力がないと無理だと思うよ?
僕が口ごもっていると、ロカリノが口を開いた。
「うちで預かってます。」
「お宅は…?」
「マフィアのドンです。」
そういった瞬間母が言葉を失う。
顔面蒼白。怯えさえ見える。そりゃそうか、マフィアだもんな。
「な、なんで?」
「色々です。」
にこやかに笑うロカリノに対して青い母。
ロカリノ、それじゃ僕近日中に殺されるみたいだよ。
「僕は大丈夫だから。」
「そうなの?」
「うん、大丈夫。楽しくやってるよ。危険なこともないから安心して。」
「…なら、いいわ。そちらのお兄さん、アカネをよろしくお願いします。」
無駄に物分かりが良くて、潔くて、騙されやすい母。
もう少し家族をやっていたかったけど、キアファミリーという家族が今の僕の居場所だ。大分家族の人数が増えちゃったね。
「ええ、任せてください。うちは、この世界のどのマフィアより安全な自信があるから。」
真面目な顔で断言するロカリノを見て、母は安心したようだった。
本当に、疑うことを知らない純粋な人だ。
「そうなのね。なら私も少しは安心できるわ。アカネ、迷惑はかけちゃダメよ?」
「うん、わかってる。じゃあそろそろいくよ。」
「もういくの?」
「うん、もうお互いの生活があるでしょ。」
「そうね。…またね、アカネ。」
「またね、お母さん。」
「あんなに短時間で良かったのか?」
「生存確認が出来れば十分だから。」
「そうか。」
「ねぇ、ロカリノ。俺の家族はもう、キアファミリーだよ。」
ロカリノが一瞬驚いたような顔をしてから、ふわりと笑った。
「そうだな、お前はもう俺たちの家族だ。」
「だから、一緒にいて。ずっと。」
「当たり前だろ。これからも俺はアカネによろしくするつもりだ。」
ロカリノの耳が少し赤い。
照れてる。あのロカリノが。
「早く帰ろ。」
「ああ。」
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