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翌る朝(2)
「朝早くから元気だな」
すべてを気づかれていた。恥ずかしさに全身が火のように熱い。
「う、うるさい。俺はまだ若いんだ!」
隆人が起きあがった。伸びてくる手に簡単につかまる。引っ張られて、隆人の胸に倒れ込んだ。
「こ、この……」
罵りの言葉は唇と唇の間に消えた。口づけの温もりと柔らかさに体から力が抜け、シーツの上にパジャマの背を沈めることになった。
唇の間から隆人が問うた。
「おはよう。気分はどうだ?」
間近で見つめられているのは、何だかくすぐったい。
「おはよ。悪くない」
首をすくめてぱちぱちと瞬きしながら答える。
「遥……」
吐息混じりに名を呼ばれ、また唇を重ねる。どうしようもなく体が熱い。特に下腹から腰にかけてが、芯からじんじんする。隆人の手に上からなであげられて、体が跳ね上がる。目を開けていられない。
「いやらしい奴だな」
耳元を舌でなぶられながら聞かされる言葉に精一杯の虚勢を張る。
「そ、ういう、あんただって――」
「そんなふうに人を呼ぶな。やる気が萎える」
「やる気だったんじゃないか」
「うるさい奴め」
いきなり突き放されて、遥ははっとして目を開けた。
隆人は着ていたパジャマを手早く脱ぎだしている。
これはどういう意味だろう。シャワーを浴びにでも行ってしまうのだろうか。遥をこのままにして。
「何を見ている」
隆人が言う。
「脱がないのか? ボタンを引きちぎってセックスする趣味は本来持ってないぞ」
思わず笑ってしまった。笑いながら、隆人を追って裸になる。ほっとしている自分がどうしようもなくおかしくてたまらない。
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