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何度、彼女に失恋をすれば、心は諦められるのだろう。
兄と付き合い出した時。
兄と同棲し始めた時。
兄と結婚した時。
梓が産まれた時。
兄と離婚した時。
義姉は浮気した兄を離婚してもまだ、愛していた。
その姿に何度、自分の気持ちをぶちまけそうになったか。でも、それは出来なかった。彼女を困らせたくなかった。家族の枠で居るほうが彼女の笑顔を長く見られると思ったから。
やっと、その悩みからは解放された。でも、自由になれた気がしない。寧ろ、義姉の面影を所構わず探して、益々、囚われてしまったように思う。こんな事になるのなら、叶わない初恋を一生持ち続けていた方がマシだった。
葬式の後、姪っ子の引き取り先で親族が揉めた。揉めれば揉めるほど梓は自分の気配を小さくした。ありがちな話、展開、不幸話に吐き気がした。3流のシナリオすぎて、これが現実かと思うと虫唾が走る。
今度は僕が彼女の手をぎゅううっと強く握った。
「僕が梓と一緒に暮らします」
「でも、咲也自分の結婚は?」
「男1人で結婚もしてないのに大丈夫?」
「グズ兄貴の尻拭いばっかりだねぇ、あんたは」
親族達の好き勝手な言葉は右から左で、僕は兄をただ見つめていた。彼は僕どころか、梓にも声をかける事は無かった。
それからの日々、僕は梓の1番の家族になる事を誓った。
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