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保育園に陽莉を預け、里帆は職場である業務スーパーに向かう。裏の従業員専用出入口の前で、深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてから、ノブを持った。休憩室に入ると、一斉にその場にいたスタッフが里帆を見た。
ひょろひょろと背の高い男性社員の小早川、化粧が濃いフリーターの由美香、パートチーフの中年女性、濱野。
この三人は昨日、恭佑の葬儀に参列していた。
こちらの感情を読もうとするような、同情した視線を浴び、里帆は気持ちが萎縮する。
「……おは、ようございます」
「さ、坂城さん、おはようございます」
「……里帆さん、大変だったね」
「昨日はお忙しい中、来ていただきありがとうございました」
里帆が頭を下げると、濱野がねぎらうように里帆の肩に手を置いた。
「……そんな決まり文句はいいよ。それよりちゃんと寝られた?」
「……はい、少しは……」
里帆は苦笑いを浮かべる。
「濱野さん、里帆さん大変だったのに、寝られるわけないって。今日だって、休んでも良かったんじゃないっすか? パートだから忌引きがないなんて、ブラックですよ。あたし、店長に言いましょうか?」
由美香は猫目にバッチリとマスカラが乗ったまつ毛を向ける。
「由美ちゃん、ありがとう。でも、働いてる方が、気が紛れるかなと思って、今日は出勤したの……」
「あ、あの坂城さん。そ、その事で店長が、話があるって言ってました。奥の更衣室にいると思います」
制服である緑のエプロンを身につけた小早川は、申し訳なさそうに口を開く。体が細いためか身長があるのにも関わらず、頼りなさそうに見える。
「分かりました」
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