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「ママぁ! なにしてるのぉ〜」
陽莉の大声で、我にかえる。
里帆は急いで涙と釈然としない悲しみを押し込める。
「う、うん、……行くよー!」
「ママぁ! いそいでっ! パパがおそらからかえってきてますっ!」
リビングの扉は半開きになっており、やたらはしゃいだ陽莉がぴょんぴょんと飛び跳ねている。
ほんとうに珍しい。もしかしたら、葬式の暗い雰囲気を受け、子供なりに何かを察知し、母親である里帆を励まそうとしての行動なのだろうか。
子供がすることは時に予想の範疇を超える時がある。現に、今も耳を疑うような発言をしていた。
……パパがお空から帰って来ている。
里帆は、何を言ってるの、と子どもに対し「死」をなんと説明すれば伝わるものかと、嘆息した。
抱えていた骨壷を強い力で持ち直し、廊下を小走りで進む。リビングの扉を開け、目に映った光景に息を呑む。
「……な、んで」
思わず、骨壺を落としそうになり体勢を整える。
「里帆、おかえり。どうした? そんな怖い顔して」
そこには壺に収まっているはずの夫、恭佑が眼鏡の奥の目を細め、笑っていた。
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