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「二人が帰って来ないから、腹減ってスナック菓子、開けちゃったよ。……まずかった?」
「そのおかし、ママがすきなやつ」
「だから、怖い顔してるんだな」
恭佑は、ははは、と陽莉と顔を見合わせて明るく笑っている。そのままリビングテーブルに広げた海苔味のギザギザしたポテト菓子を手に取り、口に入れる。
里帆は状況が理解できず、目を見張った。
「何、その包み? お土産?」
恭介は里帆の動揺など、どこふく風で骨壺に目をやる。里帆は壺を床に起き、おそるおそるソファの恭佑に近づいた。
両手で頬を持つと暖かく、触れることができる。
短い茶髪、下がり気味の眉、高くはないが形の良い鼻、薄い耳たぶ、と順番に触る。紺フレームのメガネを持って、なんの変哲もないことを確認し、元に戻す。
「ちょ、ちょ、何。何だよ? 勝手にお菓子食べたから怒ってる?」
「……本物?」
「本物も何も、自分の旦那だろ。……里帆、どうかしたのか?」
恭佑はやれやれと首を振って、困ったママだなぁ、と陽莉に笑いかける。
「さっきパパにバイバイしたんだよ。おおきな木の箱に入って、ねんねしてたの。ママは、もうパパに会えないよ、おそらにいっちゃったって言った。でも、……もうバイバイはおわりなの?」
「……え? 何、冗談だよな?」
「……何も覚えてないの?」
恭佑は笑顔を消し、真剣な里帆の顔を見つめる。そして、状況を飲み込むようにゆっくり骨壺に視線を落とす。
「覚えてないって……、その箱の中身……」
陽莉が両手を広げ、恭佑の背に飛び乗る。体はよろけたが、しっかりと体を支えている。
「……この中には骨が入ってるの」
里帆はゆっくりと言う。
「……もしかして、俺?」
「うん」
「え、俺、死んだの?」
「……でも、死んでないよね」
「だとしたら、その中身は何?」
「これは……」
里帆は骨壺に手を伸ばす。
もしかしたら一昨日から悪い夢を見ており、この壺を開けると浦島太郎の玉手箱のように煙が出てきて、夢から覚めるのかもしれない。……と、思うほど、目の前の恭佑はリアルだ。第一に、触れる幽霊なんて聞いたことがない。骨箱の包みを外し、壺の中を覗くと残念ながら、確かに遺骨が収まっていた。
陽莉がそれを覗き込む。
「それ、パパだよ! だって、ひまりもおほねみたもん。おはしでひろったよ?」
「……そ、うよ、ね。でも、どうして……」
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