49 days left(2019年4月25日)

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▶︎  状況がよく分からないまま里帆はリビングテーブルに広がったスナック菓子を口に運んだ。幽霊になった恭佑は空腹を感じるだけではなく、喉も乾くらしく、コップに注いだお茶も飲むことができた。  ハルカゼは、この際だから、と陽莉が持ってきたキャットフードはいつも同じ銘柄なので時には違う種類も食べたい、あと、前に一度だけ食べたプレミアム猫缶が非常に美味であったため、もう一度食べたい、と里帆に注文した。 「……食べ物の話より、この状況は何なの? 説明してよ」  ハルカゼが食べ終るのを待ちわびた里帆は口を開く。ハルカゼは前足を舐めながら、そう()かすな、とのんびりと言った。 「ごほん。ごほん、まず、恭佑だがーーー」  わざとらしく咳払いをし、話を始めようとすると、部屋のインターフォンがハルカゼの声をかき消した。 「あ、俺かも。柳川(やなぎかわ)先生の新刊を予約してたんだ」  インターフォン越しに宅配業者が映っている。恭佑は立ち上がり、玄関に向かう。 「またぁ? 恭佑の本棚、もう本が入らないよ。授業(しごと)で使う本はいいけど、趣味の本は整理してよね。重すぎて床が抜けちゃうよ」  里帆の言葉に、恭佑はひらりと手で返事をする。 「で、さっきの、続きだけど……」  ハルカゼに先を促す。 「すみませーん。坂城さーん。扉がすごい勢いで開いたんですけど……、サインがいるのでお願いしまーす」 「あれ?」  恭佑が行ったはずなのに、と里帆は玄関に行く。恭佑は靴箱の前で突っ立っている。 「恭佑、サインも忘れちゃったの?」  里帆が聞くと、違う、と首振った。 「……あのー、すんません。ここにサインを」  差し出されたボールペンでサインをして、箱を受け取る。 「はい、お疲れさまです」  里帆が笑うと、宅配業者の若い男性は首を(かし)げ、靴箱の前を凝視した。 「そこに何かいるんすか? さっき奥さん、話しかけたように見えましたけど……」 「え、この人、見えませんか?」  恭佑の腕を持って、指差す。宅配業者は困ったように眉を寄せ、いやぁ、と目を逸らした。 「……じゃ、あざっしたー」  彼はそそくさと玄関の扉を閉めた。
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