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――同時刻。
先程の少年たちと広場をはさんで対岸の植え込みに、一人の少年と、三人の少女が身を潜めていた。
「嫌だな…」
と呟き、機初 光(はたそめ あかり)は春には見事な花を咲かすツツジの葉っぱを次々に引き千切る。
無惨な姿になった葉が山を作りそうな勢いになってきていた。
竹刀袋を担いだ少年、刑部 蔵久(おさかべ くらく)は、無惨な姿になった葉を見て、おまえは地球温暖化をどう考えているんだなどと、心の中でズレたツッコミを入れていた。
対岸の緊張感とはえらい違いである。
「囮か、だいたい接近戦できんし、軽く死ねるな…」
「ハズレ引いた光が悪いのよ」
中、遠距離専門なのに…と愚痴る光を、セーラー服の少女、一郷 楓莉(いちごう ふうり)が宥める。
「クジで決めるなんて、あり・得・な・いッ!」
すぐさま強い口調で切り返す光。
楓莉も負けじと応戦する。
「矢蔭さんがやるって言ったんだから仕方ないのッ!」
「何で、こう大事なことテキトーにやんの、あの人ッ!!」
「機動力で言えば適任でしょう」
「機動力なら鳳(誨蓮)の方が絶対上ッ!!アイツは動きがおかしいし!!」
「たかに、常気逸脱した動きはヤバいけど、あんたも十分異常よ」
「正気の沙汰じゃない言い方やめてくんないかなッ!?」
次第に変な方向へヒートアップする二人を蔵久は冷めた目で眺め、もう一人のセーラー服姿の少女、御子神 あさぎ(みこがみ あさぎ)はどうしていいかまごついている。
数十分程前、公園入口に集合するなり「引け」と矢蔭に言われるまま、誨蓮、光、楓莉の3人でくじを引かされた。
くじは割り箸で作られた正統派(?)だった。
余談になるが、何故このメンバーでと思ったのは光だけではない。
そして、赤い印を引き当てたのは光、当たり商品は術式の解印という大役だった。
危険度からいうと別名囮、愚痴りたくなる気も分からないでもない。
「皆で行こうよー、どうせ囲むんだし」
「戦う力の無いあさぎさんを置いて行くわけにはいかないわよ!」
「あさぎさんには接近戦の鬼の刑部が付いてるじゃん」
「それはそうだけど…」
「だいたい、刑部が術組なんておかしい!」
「…俺もそう思ってるっつーの…」
それまで関わり合いになりたくなくて黙っていた蔵久だったが、埒が明かないようなので横槍を入れる。
抗議の舌打ちするのも忘れない。
今回、結界を張る担当が矢蔭と蔵久というなんとも珍しい取り合わせだった。
普段はもう少し時間をかけて入念に準備をし、面倒な手順は先に終わらせておくのだが、今回は急拵えの為勝手が違う。
だいたい、この珍しい組み合わせが結界を担当することになったのは、矢蔭以外は誰がやっても同じであることと、蔵久の部活が休み(正しくはサボり)だったという単純な理由からだ。
矢蔭にしては雑にもほどがある。
しかも、矢蔭以外は昨日からテスト休みに入っており、後は2学期末の終業式を待つだけ。
正直、休みに部活に精を出す程でもないと蔵久は考えていた。
ただし、矢蔭は日常生活、特に学校生活に支障をきたすのを良しとしない。
彼の今までの人生を考えれば気持ちは分かるが、別に部活など生きるか死ぬかリスクを考えれば、どうでもいい部類に入る。
本日蔵久が部活をサボらなければどうするつもりだっか疑問は残る。
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