叫んだら、負け

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叫んだら、負け

――ぎゃっ!  思わず悲鳴を上げそうになったのは、足もとを でっかいイモムシが這っていたからだ。  危ない、あぶない。ここで叫んだら、あっという間に見つかってしまう。  恥ずかしいから内緒にしてるけど、おれ、虫はすごく苦手なんだ。 「とも子ちゃん、みぃつけた」 「あぁ、バレちゃった」  聞こえてくる二人の笑い声。  よしよし、後はおれだけだ。さあ、見つけてみるがいい! 難しいと思うけどな。  愛ちゃんは見つけられなくて、そのうち降参するんだ。そしたら、ここから飛び出してみせる。きっと愛ちゃんは、「恭介くん、すごぉい! 全然わからなかったよ」って、おれを尊敬の眼差しで見つめてくるに違いない。  そんな妄想に浸りつつ、くさむらの影で独りほくそ笑む。いつのまにか二匹に増えてしまったイモムシは、なるべく見ないようにして。 「じゃ、次は、拓海くんが鬼だね」  とも子ちゃんの言葉に、耳を疑った。  ちょっと、ちょっと。おれ、まだ見つけられてないんだけど。 「しゃあねぇなぁ、二十数えるまでしか待たねぇからな」  いやいや、拓海まで何を言ってるんだ。おれは焦った。  でも、それよりも衝撃だったのは、次に愛ちゃんが発した言葉だった。 「でも もう日が暮れてきたね。そろそろ帰ったほうがいいかも」 ――えええええええっ?!  たまらず、おれは飛び出した。そして、叫んだ。 「おれ、ここにいるんだけどっ!!」 「あ、恭介くん、みぃつけたっ♪」  愛ちゃんの嬉しそうな声。そして、ちょっぴりイタズラっ子の笑みが向けられる。 ――か、可愛いすぎるんですけど~~!  心の叫びとともに、おれはノックアウトされた。
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