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ライバル
その人は、私が笑うと私の頭を撫でてくれました。優しい笑みを見せてくれました。
私が何かを頑張ると褒めてくれました。
大好きな人にそんなことをされた女の子は、もうメロメロです。その人以外見ることが出来なくなってしまいます。
もちろん、私も女の子ですから別の人に好意を持たれたこともありました。
でも私は、あの人しか見えないので丁重にお断りしています。
私は、あの人に恋をしているのですから。
しかし、私の努力は報われません。どれだけ頑張っても、結果が出ません。
それは、あの人が好意を持っている女性が傍にいるからです。
二人の距離が離れていれば何とかなるかもしれませんが、それは無理です。私一人の力では、どうすることも出来ません。
だからどうすればその女性を引き剥がすことが出来るのか、あまり良くない頭で必死に考えました。
だけどその女性は私の気も知らないで、私に近づいてくると、あの人と同じ優しい笑みを見せてきました。
とっても幸せそうで、嬉しそうな顔……あの人が惹かれるのもなんとなくわかります、私も幸せな気持ちになりますから。
だけど、あの人は私のものになるんです、今更友好関係とか全力で拒否です!
それなのに女性は私に話しかけてきます。褒めてきます、笑顔を見せてきます。
ほんの一瞬、一ミクロンほど心が揺らぎましたが、私の決心は固いのです。なんとしてでも、あの人を私のものにしてみせます!
――それからもずっと、私はあの人に好意を持ってもらうようにアプローチを繰り返し。
あの女性は、あの人に向ける優しさを私にも向けてきました。
……わかっています。あの女性が私に優しくしてくれるのは。
あの女性は嫌いではありません。むしろ好きです、大好きです。
けれど、あの人のことになれば話は別です、敵です。
だから――今日も私はあの女性と戦います!
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