恋心

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恋心

 私には、好きな人がいます。  それも何年も何年も、ずっと想い続けている人が。  その人はとてもカッコよくて、そして優しいのです。  まるでおとぎ話に出てくる王子様ではないのか、と思うほど、その人は素敵なのです。  もちろんその人は普通の男性です。この文明社会である現代を生きる、ただの殿方です。  だからでしょうか、周りにいる人はその人の魅力に気付いていません。  いえ、気づいた場合、それはそれで困るのですが、自分の好きな人が認められていないというのは、なんだかもやもやしてしまいます。  だけど、それは私にとって有利なこと。恋愛ゲームで言うところのフラグ――私一直線のルートが出来ているのですから。  何と素敵なことでしょう。なんと素晴らしいことでしょう。  他の人達よりも、私の方が一歩二歩先に出ているのですから。これで負けることはありえません。  そう思うと、私は嬉しくなります。飛び跳ねて、この気持ちを体全体で表現したいぐらいに。  でも……現実というのはとても厳しいものです。人の夢と書いて儚いと言うぐらいに。  だって、その人を好きになったのは、私一人ではないんですから。  だって、その人が好きになったのは、私ではないんですから。  もちろんそうなるのは仕方がありません。私より向こうの方が、一緒にいる時間が多いのですから。  でもでも、私は諦めません。負けてはいません。  いつか必ず、あの人を私のものにしてみせる……そう決めたのですから。  私は今まで以上に、その人にアプローチをしました。  積極的に話しかけたり、一緒にいる時間を少しでも長くしようとしたり。  大したことない話題でも、何とか面白おかしくしようと頑張りました。
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