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<現在>
僕は彼女が卒業してすぐ、ゲーム会社で働きはじめた。
会社は美少女を軸としたゲームが多く、たくさんの声優の方と会うことがある。
Star Mirageのメンバーとも会ったことがある。
僕はオタク界ではちょっとした有名人で、彼女たちの握手会には良く参加していた。
彼女たちは僕を見て、「ためやんだ~!」と僕を愛称で呼び、楽しい現場となった。
だが、そこに彼女の姿はない。
姿があったとしても、彼女は僕のことを知らないはずだ。
だって、彼女とは握手をしたことがないのだから。
実は、僕と彼女は中学の同級生だ。
3年間同じクラスだった。
しかし、1度も会話をしたことがない。
彼女は人気者で、途中から芸能の仕事で学校に来ることが少なくなった。
片や俺は、影の薄いいじめられッ子。
3年間、誰も助けてくれなかっ た。
彼女も僕を助けてはくれなかった。
だが、僕はそんな彼女を好きになった。
初めて顔を見たときから。
だから、彼女がアイドルとして売れても、なぜか恨む気にはなれなかった。
だが、いじめられていた俺が彼女に会えば、気持ち悪がれるかもしれない。
そう思うと、彼女に会うことは出来なかった。
僕は遠くから見ていられればそれで良かった。
そんなある日、僕の元にひとつのメールが届いた。
チケット販売サイトからのメールだ。
それは、夢原雪乃サイン会決定のお知らせだった。
僕の胸は高鳴った。
為「(会いたい…けど、会ったら確実に顔を合わせることになる。…それに、抽選に選ばれるかも分からない。)」
僕は悩んだ。
為「(最初で最後のお願いとして…。)」
選ばれても外れても、これで最後にしよう。
彼女を推すのは。
僕はそう思いながら、抽選ページに申し込んだ。
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