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あの後、夢原さんと僕は連絡先を交換した。
それからというもの、夢原さんは僕にたくさん連絡をしてくるようになった。
イベントにはたくさん誘ってくれたし、プライベートで会う回数も増えた。
芸能人の彼女が僕みたいなやつと出掛けて大丈夫なのかと心配したが、彼女の事務所はプライベートは本人に任せているらしく、今野さんも「君なら問題ない」と特に心配していないらしい。
記者に撮られるのを警戒し、変装をし行ける場所も限られていたが、彼女と出掛けるのは楽しかった。
そんな日々が2ヶ月ほど続いた頃。
今日も僕たちは一緒にいた。
今回は彼女が来てみたかったというUSJ。
絶叫系の乗り物が苦手な僕だったが、夢原さんといると心なしか平気だった。
為「(楽しいなぁ。まるでデートしてるみたい。)」
僕はそんな気持ちになっていた。
為「(…僕みたいなやつが彼女と付き合えるわけ無いか。)」
ただのゲームオタクと、テレビに引っ張りだこの有名女優。
こうやって一緒にいられることだけでも奇跡だ。
これ以上のことを望んじゃいけない。
望めば望むほど、自分が虚しくなるだけだから。
雪「押野くん?」
気付くと、夢原さんの顔が僕の目の前にあった。
雪「大丈夫?どうかした?」
為「あ、いや…。」
僕は少し躊躇った後、意を決して夢原さんに尋ねた。
為「あの、夢原さん。」
雪「ん?」
為「どうして僕なんかと出掛けてくれるの?」
雪「え?」
為「もし、過去のことに責任を感じてこんなことをしてくれているんだとしたら、僕はもう大丈夫だから。夢原さんのお陰で、昔のことを思い出してもそんなにキツくなくなったし、苦い思い出だって笑い飛ばせるようになったよ。それに、いくらプライベートが自由だって言っても、一般人の僕とこんなに毎回出掛けるっていうのはさすがに不味いよ…。」
夢「…。」
夢原さんは真っ直ぐに僕の目を見ていた。
夢「…最初はね、確かに押野くんの言う通り責任を感じてた。まぁ今も感じてるんだけど。今はそれだけじゃないの。」
為「?」
夢「今は、ただ押野くんと一緒に居たいだけなの。押野くんと居ると楽しくて、ずっと笑顔で居られるの。アイドルとしてじゃなくて、1人の女の子として居られる。それがすごく幸せなの。」
為「夢原さん…。」
夢「僕「なんか」じゃないよ。押野くん「だから」一緒に居たいって思ったの。」
為「!!」
夢「…私じゃ、押野くんの永遠の推しになれませんか?」
夢原さんは少し涙目になっていた。
為「…僕にとって、夢原さんは永遠のアイドルだよ。学生の頃からずっと。」
夢「押野くん…。」
為「…僕で良かったら、よろしくお願いします。」
僕がそう言うと、夢原さんは涙を流しながら僕に抱きついた。
夢「…嬉しい。」
僕はぎこちない手で、彼女の後ろに手を回した。
きっと僕の顔は真っ赤になっていることだろう。
空はほんのりと赤く染まっていた。
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