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図書館にて
僕は或る小説を読んでいると、隣の席に綺麗なお姉さんが座って来た。
他に席が幾らでも空いているのにだ。
どういう風の吹き回しだ?と僕は不思議に思いつつワクワクしていると、お姉さんがしゃべりかけて来た。
「ねえ、何読んでるの?」
僕は胸の高鳴りを覚えながら答えた。
「あの、人間失格です」
「えー!何それ?ネガティブシンキングありありなんですけどー!ちょっと気になる~!どんなジャンルなの?」
「純文学です」
「げげえ~!あなた堅物?」
「いや、そのお考えはステレオタイプというもので堅くはないです」
「暗くならないの?」
「まあ、多少・・・」
「何でそんなもの読むの?」
「共感できるところがありますから」
「ってことはあなたってひょっとしてダメ男?」
さっきから不躾に身も蓋もなく何を言ってるんだ!この女はと僕は思いつつ、「ま、俗な観点から見れば、そうなりますかね」
「俗って俗物の俗のこと?」
「そうです」
「ふ~ん」と納得してんだかしてないんだか煮え切らないお姉さんを見て僕はお前のことだよと思いながらも好きになってしまった。
すると、「あなた、可哀そうなのね」とお姉さんにぽつりと言われてしまい、俗物の価値観に辱められ、お姉さんから目をそらした。
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