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それから……
あの徒競走以来、わたくしはもてはやされました。
ウサギさんは高慢な性格でもあったので、動物たちの間では嫌われものだったんです。
だから余計に、そのウサギさんに勝ったわたくしは英雄扱いを受けたのです。
わたくしはと言えば、のんびりゆったり過ごすのが好きだったので、この一変した評価に戸惑っておりました。
朝から寝床に押し掛けられ、聞きたくもない世辞を聞かされる。それでも、わたくしはみなさんからの好意だと思って受け止めていたのです。
ところが、いつの間にか、わたくしは回りの動物からやっかみを買うようになっていました。
みなさんの声に答える姿を見て、鼻持ちならない奴だと思われてしまったのです。
挙げ句の果てに、あの徒競走も不正をしたのではと疑いをもたれるようになりました。
やれ「競争の前に、眠くなる食べ物を食べさせたのではないか?」とか、やれ「本当は二匹で交代しながらやったのではないか?」とか、身に覚えのない噂までたてられたのです。
わたくしは地道に歩き続け、そして勝ったのです。ただそれだけなのに、なぜここまで言われなくてはいけないのでしょう?
そして、学びました。
──出る杭は打たれる──
それからは、日々、平穏に暮らせることを祈っている次第でございます。
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