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「おかわりが必要なら言ってくださいね」
めくるめく多幸感で夢心地になっていると、店員さんがキッチンからお鍋を持ってきた。こっくり赤い鋳物ホーロー。人気ブランドのものだ。
「僕もお腹すいてきました。ご一緒してもいいですか」
「どうぞどうぞ。このケーキめちゃめちゃ美味しいです」
「ありがとうございます。うまくできてよかったです」
カウンターを挟み、向かいあう。スツールに腰をかけた店員さんは、大口を開けたりなんかもせずお行儀よく召しあがり、必要以上に話しかけたりもしてこない。こんなシチュエーション初めてで変なかんじだけど、なぜか嫌じゃない。異性、とくにお綺麗なかたが相手だと萎縮してしまいがちなのに。
ちろり、視線を手元から正面に動かす。あらためて近くで見た店員さんは、本当に整った顔をしている。たまご型の輪郭。毛穴が存在するのか疑いたくなるような、つるつるのお肌。そこに形のいい目鼻口が黄金比で収まっているだけじゃなく、立ち居振る舞いにもどことなく品がある。物腰も穏やか。いいとこのご子息だったりするんだろうか。
がちゃがちゃうるさい私の思考に反して、時間は静かにゆったり流れる。その一番の要因は、店員さん自身に思えた。彼の持つ柔らかな雰囲気。まるでこの紅茶のシフォンケーキみたく、ほんのり甘く、ふわふわの。
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