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翌日、八雲さんのおやつを待ちながらバイト探し。あいまに話し相手をしてくれる朔くんは、難色をしめしてばかりだ。
「年明けてからにすればいいのに」
「そのつもりだから今のうちに決めとかないと。これにしようかな。バレンタインとホワイトデーの販売。お正月関連のはもう募集ないよね、さすがに」
「年末年始はゆっくりしろよ」
「でも、これまでゆっくりしすぎたからねぇ」
いよいよ本気をださないと、と一心発起していたところにドアベルが鳴る。
「あら、お邪魔だったかしら」
乾いた冷気と一緒にはいってきたのは蓮花さん。たまにこうして事前連絡なくいらっしゃる。
「なんか飲むだろ」と朔くんが逃げるようにキッチンへ消える。蓮花さんは「とって食いやしないわよ」と笑う。入れ違い、八雲さんがカウンター奥のビーズのれんから顔をだした。
「連絡してくれればよかったのに。蓮花さんのおやつ作ってないですよ」
「持ってきたから大丈夫。茶葉も」
「ありがとうございます。あ、和颯さんでしたら留守ですよ。今日は港北方面です」
「いいの、日和ちゃんに用事があったから」
と、こちらをふり返る。
「こないだ話してた刺し子、見せてもらおうと思って。いいでしょう?」
「はい。それは全然」
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