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裁縫箱をひらく。練習用に作っていたふきんを何枚かとりだして渡すと、蓮花さんは「素敵ね」と褒めてくれた。
「ありがとうございます。けど、時雨さんのと比べると、どうしても見劣りして」
「年季が違うんだもの、しかたないわよ」
ひとつずつ丁寧に見られると値踏みでもされている気がして緊張。それにしても、どういう風の吹きまわしだろう。
「うん、いいわね。商品にできるくらいになったら売ってみる? うちは開運グッズがメインだから縁起物の柄とかで」
「へ……?」
「オンライン販売のノウハウも教えるわよ。たまに店を手伝ってくれるなら。大繁盛してるんじゃないから、お給料そんなに弾めないけど」
徐々に頭の中が整理され、ぶわっと変な汗がでた。
「わ、私のなんて趣味未満のものですよ!」
「そのわりには、いい出来よ。ま、嫌なら無理にとは言わないけど。考えておいて」
朔くんがお茶をいれて戻ったのを機に、蓮花さんは持参した鈴カステラ(辰之介さんからのいただきもの)をぽんぽん口に放りこむ。
「日和ちゃんもどう? 美味しいわよ、これ」
まん丸を一粒、ぎゅっと噛みしめる。胸の高鳴りは、どうしたってとまらない。
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