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「悩みごとか?」と朔くんにきかれたのは、あくる日の午後だった。
無意識にひょっとこになっていたのかと口を押え適当にごまかそうとしたけど、真剣に心配してくれているが見てとれて、スノードームをもらったときに言われたことを思いだし、考えをあらためる。
「まあ、そんなとこ」
「昨日の蓮花の話、迷ってんのか?」
「それもあるけど……」
刺し子とアプリ、どっちをとるか迷っているのを相談する。朔くんは「どっちも選べばいいじゃん」と、あっさり。
「私も一瞬それ思ったんだよね。麻衣ちゃんのところで働きながら休日に蓮花さんのお店を手伝って、あいまに刺し子グッズ作ったりして」
理想の生活。だがしかし、
「私、器用なほうじゃないから、どっちも中途半端になりそうで」
そうなれば蓮花さんや麻衣ちゃん、麻衣ちゃんの会社の人たちにも迷惑をかけるし、私自身もくたくたに潰れてしまう。
「日和はどっちに興味があんの?」
「そうだなぁ……」
刺し子をするのは嫌いじゃないし、自分が作ったものを褒められるのは嬉しい。が、収入面は心もとない。居候生活続行で、まわりに負担をかけてしまう。
その点、アプリの会社は安定収入。ただし、紹介してくれた麻衣ちゃんの顔に泥をぬらないようにしないといえない。多大なプレッシャーだ。
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