明日をのぞむ場所

42/48
前へ
/228ページ
次へ
「どっちにしろ怖いんだよね、失敗するのが。臆病者なんだよ」  実力がともなわなければ無駄骨。すべて水の泡。そう考えると、新しい世界に踏みだす勇気がでない。私は弱い。七転び八起きだなんて思えない。一転びで撃沈する軟弱人間だ。 「それなら俺も臆病者だ。だから学校にも行けなくなった。でも、みんなのお陰でまた頑張れてる」  朔くんが目線をあわせてくる。とても、まっすぐに。 「日和にも、和颯や八雲がいる。蓮花や辰爺や友達の人だって。俺にはまだ引っぱりあげるだけのちからはないけど、そのぶん日和の気持ちのそばにいることはできるから」  真心で紡がれた言葉に、目頭が熱くなる。 「ありがとね。私、年上のくせに情けなくて、ほんと申し訳ないよ。励まさなきゃいけないほうなのに」 「そんなの、歳とか関係ないだろ」 「年長者は頼りがいあるほうがいいでしょ」  ふぅん、と相槌。ご不満そうに頬杖。それからなぜか、 「子ども扱いしてられるの、今のうちだからな」  不敵な笑みに反射的、息がとまる。なんていうか妙に大人びていて、なんか度肝ぬかれて涙ひっこんじゃったわ。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加