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「どっちにしろ怖いんだよね、失敗するのが。臆病者なんだよ」
実力がともなわなければ無駄骨。すべて水の泡。そう考えると、新しい世界に踏みだす勇気がでない。私は弱い。七転び八起きだなんて思えない。一転びで撃沈する軟弱人間だ。
「それなら俺も臆病者だ。だから学校にも行けなくなった。でも、みんなのお陰でまた頑張れてる」
朔くんが目線をあわせてくる。とても、まっすぐに。
「日和にも、和颯や八雲がいる。蓮花や辰爺や友達の人だって。俺にはまだ引っぱりあげるだけのちからはないけど、そのぶん日和の気持ちのそばにいることはできるから」
真心で紡がれた言葉に、目頭が熱くなる。
「ありがとね。私、年上のくせに情けなくて、ほんと申し訳ないよ。励まさなきゃいけないほうなのに」
「そんなの、歳とか関係ないだろ」
「年長者は頼りがいあるほうがいいでしょ」
ふぅん、と相槌。ご不満そうに頬杖。それからなぜか、
「子ども扱いしてられるの、今のうちだからな」
不敵な笑みに反射的、息がとまる。なんていうか妙に大人びていて、なんか度肝ぬかれて涙ひっこんじゃったわ。
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