山下町ライフはじめました

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 例のヒアリングのあと、問題の上司は会社から注意を受けただけで、それ以上のおとがめはなかった。なにかが劇的に変わるとも期待していなかったし、そのせいで矛先が私に変わるのも覚悟のうえだった。けれど当の同僚からも嫌がらせをされるようになったのは、まったくの想定外。  噂によれば彼女は、私が波風をたてたことに立腹したらしかった。それを知ったときの率直な気持ちは「まじすか」という困惑。さんざっぱら泣きついてきたから解決したがっているのだと思い、どうにか手助けできればと捨て身で頑張ってみたのが、ありがた迷惑になっていたとは。  けっきょく、とりつく島のない彼女に本当の理由はきけずじまい。私が間違っていたのかなぁと悩んだりしているあいだにも上司のいじめと彼女の嫌がらせは日に日にエスカレートし、やがて周囲にも波及。私は孤立することになった。  学生時代も浮き気味で似たような目にあってきて慣れているため、それについてのダメージはそんなになかったけれど、仕事の妨害や失敗の責任を押しつけられたり、出勤日数を勝手にへらされたりしたのはいただけなかった。就活に失敗し、時給だけで決めたコールセンターのアルバイト。お給料に響くのはもってのほかだったのだ。
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