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近づいてじっくり見る。値札はない。売りものだとしたら相場はどのくらいだろう。アンティーク(製造されて百年以上)ほどの古めかしさはなさげだから、そんなにお高くない気はするけれど……。
「こんにちは」
鍛えられてもいない審美眼で睨めっこしていたら突然、声をかけられた。奥の扉から現れたのは同世代らしき男性。詰め襟のホワイトシャツにベージュのパンツ、ブラックエプロン。ということは、やはりここはお店で、この人は店員さんなのだろう。
だが、思い違いじゃなくてよかったと安心したのは一瞬で。不自然なところはないはずなのに、なにか特殊な引力が働きでもしたかのように、私の目は彼から離れなくなってしまった。なぜだろう。整った顔はしているけれど、好きな系統でもない。どちらかといえば、こういう穏やかオーラのある美形より、きりっとした男前のほうが好みだし。
「どうかしましたか」
瞬きもせず見入っていたら、その人が首を傾げた。ハニーベージュの髪がふわりと連動する。やばい、どうやってごまかそう。「なんでか店員さんが気になって」なんて言えるはずもない。
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