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答えを探しあぐね目線をさまよわせていると、ふいに嗅いだことのある香りをとらえた。くんくんと動物っぽく鼻を動かす私に、店員さんが納得顔になる。
「ああ、これですか。ケーキを作ったんです。お鍋で」
「お鍋?」
ケーキってオーブンで焼くものだと思っていたけれど、そんなことできるのか。知らなかった。どんなのだろう。普通のスポンジケーキかな。というか、この香りは……。
頭の中がケーキに支配されたのが、ありありと顔にでたらしい。
「よかったら食べていかれますか」
店員さんの表情がふっと崩れる。好みのタイプではないとはいえ、とろけるような笑顔を見せられたら、それなりにどぎまぎしてしまう。しかもケーキ。お鍋のケーキ。お腹も限界。断る理由がない。
「はい、喜んで!」
「じゃあ、お好きな席へどうぞ」
扉のむこうに消えていく店員さんを見届け、座席を吟味する。フロアの奥半分には、ゆったり四人は座れそうなソファー席と、カウンターが四席。あとから別のお客さんが来るかもしれないのを考え、カウンター席を選ぶ。
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