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しばらくぼんやりと見つめていると、ふと妹は笑顔のままで動きを止めた。
「もう良いのか?」
僕が問いかけるも妹は黙ったままだった。けれども笑顔は崩さずに、恥ずかしそうに俯き気味の視線を床に投げている。
「それにしても毎日飽きずに、よく踊るよね。どうしたら君みたいに、自分の好きな事に打ち込めるんだろう」
僕はずいぶんと悩んでいた。
高校で酷い虐めにあっていた僕は、一時は自殺未遂にまで追いやられた過去がある。
死ねば楽になる。こんな人生、終わらせた方がいい。
だから僕は首を括ろうとして、裏庭に植えられていた柿の木にロープをかけた。
ここならば、家の周囲を囲むようにブロック塀があり、通行人から見られる心配もない。だから僕は焦ることなく、リビングから椅子を持ち出すことができた。
だが、いざ首にロープをかけて足で椅子を蹴った途端、近くにあった金魚鉢に椅子が当たったのかバリンと音がした。不要になって行き場を失った金魚鉢が、そこに放置されていたのだ。
それでも身体は宙に浮いていた。逃れようのない苦しさにもがいていると、音を聞きつけたのか母が様子を見に来てしまった。
僕を見つけた母が慌てふためきながら駆け寄ってくるのを、僕は薄れ行く意識の中で見た気がする。
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