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気がついた時には病院のベッドの上で、両親はとにかく僕の顔を見て泣いていた。良かった良かったと言って、僕の手を握って、大人げもなく涙を零していた。
退院して家に帰ると、妹だけが僕を笑顔で迎え入れてくれた。僕はなんだか恥ずかしくなって、もう二度とこんなことはしないと、心に決めたのを今でも覚えている。
最初こそ、妹のお陰で前向きになってきた僕に両親は喜んでくれていた。でも最近は、僕の事を困ったような不安げな目で見ているような気がする。
昔の苦い思い出と、両親の困り果てているような目。僕は居てもたってもいられず、笑顔で立ち尽くしている妹に近づいた。
心臓がバクバク打ち鳴らし、嫌な記憶がまざまざと脳裏をよぎっていく。
僕は震える手で、妹の足元にあるネジを回した。キリキリと音を立て、甲高いオルゴールの音が鳴り響く。
「君が踊っているのを見ると、僕もこのままじゃいけないって思えるんだ。父さんと母さんからは、僕が守ってあげる。だからずっと踊り続けていてほしい」
僕がそう言って机に乗せると、妹が再び回りだす。笑顔を崩さず回りだす。
僕はそれを見て、決意を固める。
妹が踊り続けていられるように、僕が両親から守ってあげなくちゃいけない。
両親が妹に怒ったら、こうして部屋に避難させてあげる。取り上げられそうになったら、身を挺してでも庇う。動きを止めたら――こうして手助けしてあげる。
これが僕の役目。逃げ出すわけにはいかない。
そのことに気づいた僕は、少しだけ生きる希望を見出したのだった。
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