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妹は所かまわず踊っていた。
体をゆっくりと回転させ、白い華やかなドレスが弧を描くように広がっている。
飽きることなく無邪気な笑みを浮かべながら、本当に楽しそうに回っていた。
「本当に踊るのが好きなんだね」
僕がそう話しかけると、妹は笑みを浮かべたまま、くるくると回り続ける。
「でもあんまり踊ってばっかりいると、母さんや父さんにまた叱られちゃうよ」
僕は高圧的にならないように気をつけながら、楽しそうな妹に忠告する。
リビングで踊っていた妹に両親が「いい加減にして欲しい」と言っているのを見た僕は、部屋においでと言って連れてきていた。
妹は好きな事をしているだけなのに、注意するのは納得がいかなかったからだ。
僕は飽きる事なく、踊り続ける妹をじっと見つめる。さっきまで怒られていたことを忘れてしまったかのように、妹は脇目もふらずに回っていた。
そんな姿に僕は憧れを抱いていた。自分にはしたいことが何もない。夢も希望も何もない。毎日がただ過ぎ去っていくのに、身を委ねているだけ。それに比べて妹は、まるで人生を謳歌するように笑顔で踊り続けている。
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