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下の世界は予想以上に寒かった。
僕は毛布にくるまりながら、彼女を探し回った。
随分と長い時間がかかってしまって、彼女の顔も忘れてしまった。
それでも僕は探し続けた。
何をしにここへ来たのか、思い出せなくなる時もあった。
それでもぼんやりとした、その何かだけは胸の奥で感じているのだった。
ある日、道を歩いていると道端にうずくまる彼女を見つけた。
その途端、この世界へ降りてきた理由は余りにも自然に思い出され、僕はすぐ彼女に毛布をかけた。
彼女は毛布にくるまると、顔を上げて微笑んだ。
僕も彼女に微笑んだ。
彼女は毛布を広げて、僕に手招きした。
彼女の横に座って、一緒に毛布にくるまった。
毛布の中は前の世界よりも、ずっと温かかった。
僕たちは寄り添って空を眺める。
いつか一緒にあの世界へ戻れたらな、何て思う。
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