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第一の怪奇現象 付喪神は部屋にいる
父さんの会社が倒産した。
ダジャレじゃない、マジの話だ。
突如設立されたライバル会社に圧倒的な差をつけられた社長は、会社を畳むことしかできなかったらしい。
すごくいい社長だったそうだ。
特技も趣味もなく無職生活を続けてきた父さんを雇ってくれた唯一の人間、らしい。
会社がつぶれてその社長が町を引っ越す羽目になり、父さんは完全に働き口を失った。
そんな事情があって俺は目指していた名門高校(ちなみに授業料半端ない)を諦めなければならなくなり、家計もあっけなく崩れ落ちた。
結果家は借金を抱え、俺はといえば親戚に預けられた。
このまま転校してもいいとは言われたもののあまりに季節外れすぎる。
大体、卒業式とか気まずすぎだろ。
中三じゃなきゃ、とっくに新しいクラスに転入していただろうけど。
なので、結局俺は春休みが終るまで親戚の家で登校を待つことにした。
が、親戚のひどい扱いに耐えられなくなって家を飛び出し、色々あってこのアパートを見つけたのである。
本当に色々あった。
勢いで家を飛び出したはいいものの持ってきたのは必要最低限の荷物だけ。
ノコノコ帰るなんてカッコ悪い、あんなところ帰りたくない、けど帰らないとどうにもならない、色々考えた。
話すと長くなるので語らないが、アパートの大家に会うまでもひと騒動あった。
さらに一人暮らしを決心するのにも時間がかかったのだが、了解の理由の一つは何といっても家賃だ。
何故かこの一室だけは家賃がとても安かったので、これなら何とかいけるんじゃないかと考えたのだ。
甘い考えかもしれないが、幸いなことに春休みが終ればすぐさま高校生、通称アルバイトを許可されてる学生になれるのだ。
うん、きっと何とかなるはず、と無理に自分を納得させて決心したわけなのだが。
家賃が安い理由は住んでみて分かった。
怪奇現象だ。
事故物件と言うわけではないが、毎日のように起きる怪奇現象に大家さんも家賃を安くせざるを得なくなったのだろう。
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