戦我原

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戦我原

「おはよう、志門!火事大丈夫だったか?」 少年は志門に問い掛けた。 「ああ、おはよう雷電。俺は…大丈夫だったよ。」 志門は友人である鳴神雷電の問いに答えた。 「そ、そうか、……なんと言って良いか分からないが、とにかくお前が無事で良かったよ」 雷電は複雑そうな顔しながら言った。 「おお、そうだ。そういえば、なんでお前は今宵と一緒に居るんだ?」 話題を変えるように雷電は問い掛けた。 「ああ… 志門は時雨の家に住み始めたことを話した。 「まじか志門!」 雷電は心底驚いた顔をしながら言った。 「ああ、まじだ」 真剣な顔をして志門は応える。 「そうか、とりあえず当分いるところが出来て良かったな。 女子と一緒だけど」 雷電はニヤつき笑いを堪える様にしながら言った。 「いや、女子と一緒って」 志門が言い訳しようとした所で… 「お前ら、時間だぞ。座れー」 志門たちの担任で体育教師の十文字善彰が入って来た。 「出席を取るぞ。っとその前に黒城、放課後職員室に来てくれ、話したい事がある。」 十文字は忘れていた事を思い出しながら言った。 「あ、はい。わかりました」 志門は疑問に思いながら応えた。 「じゃあ、改めて出席を取るぞ。青葉……」 十文字は改めて出席を取り始めた。 ----- そして、放課後 「葬式のときはほとんど話せ無かったから話したかったんだよ。」 十文字は志門に呼び出したわけを話した。 「今後は今宵の家に住むってことで良いんだよな。」 と十文字は尋ねた。 「はい、俺の両親と時雨の両親が何かあった時に、引き取る約束をしていたらしいので。」 志門は少し悲しそうに答えた。 「そうか、じゃあこの紙に色々と変わった住所とかについて書いて持ってきてくれ。」 十文字は志門の変わった情報を登録するための紙を渡した。 「わかりました。失礼しました。」 志門はそう言いながら職員室を出て行った。 「志門、何の用事だったの?」 時雨は首を傾げながら聞いた。 「新しく変わった住所を登録するための紙をもらいに行ってたんだ。用も済んだし、帰ろう」 「うん」 昇降口まできた時、志門はクラスの優等生である戦我原龍吾を目撃した。 昇降口の掃除をしているのなら、手伝おうと思い、志門は声をかけようとしたその時、驚くべき光景を目撃した。 なんと戦我原が男子生徒の胸ぐらを掴み、顔面を殴っていたのである。そしてその周りには2人の男子生徒が恐怖のあまり身動きが取れないでいた。 「戦我原、何やってんだよ」 「何って、掃除さ」 龍吾は笑いながら話を続ける。 「この世界は堕ちるところまで堕ちてしまった。思いきり吸えない空気、終わらない戦争、自分の欲望のためなら誰かを不幸にしてでもいいという人間。そういう人間を掃除するんだよ。」 その時、男子生徒の一人が言った。 「許してください、もう後輩をいじめたりしません」 しかし龍吾はまるで汚物でも見るかのような目で言った。 「悪人は裁かねばならない」 そう言うと、ポケットから火の鳥のカードを取り出し 「フェニックス」 手から火球を出して男子生徒達に近づけようとした。 「しょうがない、こいつを使ってみるか」 志門もポケットから、燃えている蜥蜴のカードを取り出した。 「ふーん、君もカードを使うのか、じゃあ、君から裁くとしよう。」 そう言うと龍吾は出した火球を志門に向かって打ち出した。しかし火球が志門に当たった時、火球が吸収された。  「時雨は離れてろ、サラマンダー」 そう言うと志門は火球を纏った拳で龍吾を殴りつけた。 熱気が周りに漂う。 「はっ、馬鹿かい。フェニックスの能力は火球を打つだけだと思ったのかい?フェニックス」 龍吾が炎に包まれると頬の傷が消えた。 緊迫した空気の中二人が睨み合っていた。 「黒城、ちょっといいか」 十文字の声が聞こえ、声の方を向くと 「ドンッ」 と身体に何かが強く当たり、志門は余りの衝撃に後ろに倒れた。 ーーーーーーーーーーーーーーー 「志門大丈夫?」 時雨の声聞き冷静になって周りを見回すと、龍吾の姿はすでになかった。 「あれ、ここは格技場だよな。俺は確か、戦我原と戦って…戦我原は?」  志門の問いに十文字が答える。 「格技場へ向かおうとしたら、黒城が昇降口で睨んでで何をしているのかと聞こうとしたら、突然倒れたから、部室へ運んだんだ。戦我原はどこにもいなかったぞ。何か戦我原とトラブルでもあったのか?話してみろ。何か力になれるかもしれないしな」 「信じてくれないかもしれないですけど、実は…」 十文字の話を聞いた志門は今までの出来事を話した。 不思議なカードの事。そのカードのおかげで時雨の病気を治した事。戦我原がいじめっ子達を殴っていた事。彼もカードを持っていた事。その戦いで倒れた事。 「そうか…俺の知らないところでそんなことが起きていたんだな。」  「信じてくれるんですか?」 驚きを隠せない志門に対し、十文字は微笑みながら答えた。 「信じるさ、黒城や今宵が嘘をつくような生徒じゃないのは、俺が一番知ってるからな。もし困った事があったらいつでも相談してみろ。俺が力になってやる」  「「ありがとうございます」」 志門と時雨は十文字にお礼を言って帰っていった。 その様子を一人の少年が聞いていた。 「まさか黒城先輩が能力者だったなんて…」 少年はそう呟くと空手の稽古の続きを始めた。
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