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1年経った頃、そろそろ結婚を考えても良いかもしれないと思い始めた。本当はもっと早く彼女の両親の墓を訪れたかったのだが、彼女は理由をつけてはそれを拒んだ。
彼女のペースに合わせようと思いながらも、頑なに僕を墓に近づけないようにしているように感じて首を傾げる他なかった。
「なぁ、そろそろ挨拶に行かせてよ」
彼女は少し考え込むと、ふっと微笑んだ。
「そうね……そろそろ、良いかもしれないわ」
「本当?」
「えぇ」
「良かった。君がはぐらかすものだから、少し不安だったんだ」
「ごめんなさいね……。気持ちの整理をしたかったものだから」
もしかしたら彼女にとって、時間のかかる話だったのかもしれない。僕の心配は杞憂だったのだと、ほっと息を吐いた。
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