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驚いて目を開けば、非常にいらついている総司は、ぶーっと頬を膨らませて、その声の主を睨む。
「何、璃桜。今俺こいつを斬りたくて仕方ないんだけど」
だけど、俺はそんな言葉も総司の様子も全く目に入っていなかった。
頭を支配しているのはただ一つ。
「……今、平ちゃんって呼んだ……?」
「うん、平助より、平ちゃんの方が、貴方に合ってる気がするから、そう呼びたいんだけど、駄目かな?」
「駄目、」
「駄目じゃない!!」
総司の否定を上から食い気味に否定してやった。やべぇ、嬉しすぎる。
天使はさらに、その美しい顔で、にこりと破壊的な笑みを放って、言葉を紡ぐ。
「私、初めての人のところに行くのに、少しでも知ってる人がいてほしいの。そうちゃんと、平ちゃんと、みんなで一緒に行きたいな」
「…………っ」
ああ、神様仏様、ありがとうございます。
俺はもうこれだけでこの先、生きて行けそうです。
感謝の気持ちを表した俺に、神様か仏様か誰だかなんて分からないけれど、俺にさらなる褒美を与えてくれた。
「ほら、平ちゃん」
隣で名を呼ばれ、反応する間もなく、するりと柔らかな感触が右腕を支配したと思えば。
ふわり。
また、あの匂いが鼻を掠めて。
「早く、行こ?」
―――――――っ!!!!!
ああ、もう、死んでいい。今なら何の後悔もなく死ねる。
璃桜が、俺の右腕に自分の左腕を絡めて、にこにこと笑っていた。
それだけで、ここが天国だと思えた。
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