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店内はいつもの何気ない日常を送るはずに違いなかった。深夜2時に俺が訪れるまでは。コンビニ内で怒声が飛ぶ。
「早く、レジの金、この袋に詰めやがれ‼︎」
包丁を突き出された店員は手が震えていた。まだ中年のそいつは警察の到着を待つか、素直に従うか迷っているようだった。
俺は思いっきり二の腕に包丁を切りつける。血が溢れるようにしてヨダレを垂らした。血の気の失せた店員は顔を真っ青にしていた。
「早くしろ」
店員は慌てて袋にレジの金を突っ込んだ。
「おっしゃ、じゃあな‼︎」
自動ドアを潜り抜けると覆面を脱ぎ捨てる。ここからは俺は俺に戻っていいのだ。道を踏み外した高校生の高良裕太に。
顔がニヤけつく。さてこの金どうしようか、そんなこと考えていると、黒服の角刈りにぶつかった。よく見て歩きやがれ。しかし、今は余計なことに踏み入れないことにしよう。俺が無視すると、角刈りの男が「おい、ちょうど良かった」などと声をかけるから振り向くと、殴りかかられる寸前だった。
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