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倒れ伏した男をどうするか。
気づけば戦いの間に通りからはずれたドヤ街のようなところに来ていたらしい。
とりあえず昼間から酩酊した飲兵衛くらいに見られて終わりだろうと、路地に転がしておくことを決める。
「…?」
妙な違和感を感じて外したジュエルを見ると、ひび割れが入っていた。
「…さっきムチが掠りでもしたかしら…」
しかし往々にして悪いことは重なるものである。
「…今日は大漁ね」
視線を向けた、少し拓けた更地では黒づくめの兵団と戦う戦士が居た。
しかしX《エックス》ライダーとは渋い選択だ。
ライダージュエル隆盛のころは時代も手伝って平成ライダーかその怪人がほとんどだった。
Xライダーなどの昭和ライダーと言われるカテゴリは中々にレアなのだと知り合いの求道者が言っていたのを朧気に覚えている。
誰かが扮したXライダーは、武装であるライドルを棒にして器用に兵団を捌いている。
だが、いつからやっていたのか肩で息をしていた。
向こうはこちらに気づいていないが、素通りするのも寝覚めが悪い。
まして“組織”の私兵を放置するという選択肢も私の中には存在しなかった。
「……。」
刹那の躊躇の後、私はジュエルを取り出す。
描かれているのは、禁断の果実を模した鎧に身を包む騎士。
「変身…!」
『リンゴアームズ!』
私の身体は軽装鎧に包まれ、その頭上には果実を模した鎧が現れる。
それが私の頭に覆い被さった時…。
『デザイア!フォビドゥンフルーツ!』
私の姿は、異界の力を操る女騎士、イドゥンへと変わった。
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