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「そんなの、いやだ! 行かないで凪、俺っ、俺まだ凪と、一緒にいたいよ!」
「ごめんな。なあ加那汰。忘れるな、一番、大事なのは――いつでも、ここん中にある」
凪はおもむろにみずからの胸に親指をついてみせると、瞳を明るく輝かせた。
「迷ったら思い出せ。なんだってやってみなけりゃ、わからない。心の声を信じて、自分で答えを探しに行け。大丈夫、おまえはたいしたやつだよ」
「凪っ」
「加那汰、世界ってのはな、おまえが思うよりもっと、でっかくて面白いぞ。短い間だったけど、一緒にすごせて楽しかった。……姉ちゃんを大切にな」
ぶっきらぼうに頭をぐしゃりと撫でられて目をつむった次の瞬間、凪の姿は加那汰の前から忽然と消え失せた。
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