幕末戦隊サムライジャー

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どの時代にも増して人々の心が荒んだ現代。妖怪たちも力を増して人間たちを襲ってきていた。  一子相伝とされる慟哭を封印する術を不完全な状態で使ったサムライレッド・統理(とうり)は深い傷を負いながらも慟哭に致命傷を負わせ、三途の川の氾濫を間一髪のところで防ぐことが出来たのだった。    それから三カ月が過ぎようとしていた。  統理が負った傷も治りサムライジャーの面々はつかの間の平穏な日々を堪能していた。  文化遺産としての価値を持つ巨大な屋敷は古さを感じてもボロさは感じない伝統と歴史が刻まれた由緒正しきものだ。  謁見の間として使われた一室に集まったサムライジャー達は厳しい表情をしていた。  「殿が慟哭に致命傷を喰らわせてから三カ月。妖怪たちの動きはまだ無いが戦いが終わったワケではない」  統理を殿と呼ぶのは彼の教育係兼世話係の丹波(たんば)だ。先代のサムライレッドから仕える頼れる腹心だ。  「慟哭自身が動けるようになるまではまだ時間がかかるはずだが奴を復活させるために妖怪たちが動き始めるのは確かだ。お前たち、気を引き締めておけよ」  統理に言われて力強く返事をしたのはサムライブルーの青江竜牙(あおえりゅうき)、サムライグリーンの地葉実真(ちばみつざね)、サムライイエローの鉱石茜(こうせきあかね)、そしてサムライピンクの風間華恵(かざまはなえ)だった。  「殿。奴らの次の手はどんなものとお考えですか?今回の戦いで慟哭だけでなくかなりの妖怪たちも失ったはず。奴の手駒はわずかしか居ないと思われますが」  竜牙の問いに統理も腕を組んで考えた。  「策士のシタリは抜け目のない奴だ。必ず次の手を打って来る」  「何が来ようが俺がぶっ倒してやるぜ!」  息まく実真に華恵がそうね、と優しく微笑む。  「私たちもいっぱい修業、積んでますからね」  竜牙と共に修業に励んでいた茜も同意見だった。  「次こそは必ずや殿をお守り致します!」  竜牙の固い決意に統理はあぁ、と頷いた。  「頼りにしてるぞ。お前たち」  不意に部屋の隅にぶら下げてある大きな鈴が鳴り始めた。三途の川から妖怪が人間界へとやって来た知らせだ。  「来た!」  「よっしゃ!気合入れて行きますよ~」  ゲン担ぎの火打ち石を鳴らすと丹波はドスの利いた声を上げた。  「いざ、出陣!」
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