三叉路

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 スマホの画面に見慣れた文字が映っている。 「また……ダメか」  柚木開人(ゆずきかいと)は、ネクタイを緩めてベッドに飛び込んだ。見上げた天井は、今日も変わらずにただ白い。  ここまで厳しいとは思っていなかった。  就職活動のことだ。  スマホに『この度は残念ながら……』という見慣れた定型文が躍っている。    死んだ魚の目をしている。スマホの暗い部分に写る自分の目を見て、開人は辟易した。 「自己責任ってやつだろ。頑張るしかねえ」  自分に向けてそう呟き、買い貯めしてある発泡酒を思い切り飲んだ。鏡を覗き、目を見開く。さっきみたいな目をしてちゃダメだ。自分が決めた道だ。落ち込んでる暇はない。  今日は終わる。また、明日には陽が昇るさ。
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