三叉路

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 ───誰でも聞いたことのある会社だ。そびえ立つビルを臨むと、カラーガラスが太陽を眩しく反射している。  開人はネクタイを締め直し、エントランスを抜けた。滑りそうなほど磨かれた石張りの床を歩き、エレベーターホールを探す。音もなく開いた30人乗りのエレベーターには、まばらに8人が乗っていた。  ふと、同乗の女性が隣の男性に話しかけた。 「今日のこれ、面接ないって。グループディスカッションらしいよ」  もう普通に働いているOLさんのようだったが、どうやら同じ就活生のようだ。 「なんだよ、莉奈。誰情報だ、それ」 「先輩」 「この会社の?」 「そりゃそーでしょ」  女性は襟足の髪をくるくると巻きながら、小さく笑っている。 「それ、ずるくね?」  男性のほうが口を尖らせて言う。 「将暉(まさき)だって、同じようなもんじゃないの? 学校のOGの力である程度決まってんでしょ?」   「んー、まあな」  27階に着くと、その男女を含む8人全員が降りた。みんなライバルなのか……。開人は一番最後に開くボタンを押しながら降りた。
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