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「副部長、エネラル企画さん、上がりそうですか?」
電話を切った柚木は、詰め寄る担当者に向けて首を振った。
「すまない。この案件は僕がエネラルさんに託したから責任を取る。他の会社さんは僕で探すから、2週間後ろにスケジュールずらそう。ごめんね」
その若い担当者はとんでもないと言うように首を振った。
「いえ、それならば私で他を探します。……副部長、優しすぎなんですよ。もう何度エネラルさんに裏切られてきたか。遅いくらいです」
「うん、すまない。専務には僕から伝えておく」
柚木は手を机について担当者に詫びた。担当者は恐縮して手を何度も振った。
「副部長、よろしいでしょうか?」
担当者が離れると、すぐに別の社員が柚木に声をかける。スケジュール管理をしてくれている社員が柚木のデスク対面に掛けた。
「今日は19時に専務と住仲銀行さんとの打合せです。他、入れてらっしゃらないですよね?」
「うん、大丈夫だよ。あと……君は今日は同席しないでおこう」
柚木は声に元気のないその社員に笑みを向けた。
「よろしいのですか?」
「ああ、住仲銀行さんのあの方も悪気がないんだろうけど、お酒が入ると良くなくてね……。この間は君に苦労をかけたから」
「ありがとうございます」
前回セクハラを受けていたその女性社員は、柚木に何度も頭を下げた。
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