48人が本棚に入れています
本棚に追加
カゲロウは、リシルを谷の奥へ運んだ。
細い川が真ん中に流れる両岸を、柔らかい苔が覆っている。その空間を隠すように、周りを断崖絶壁が囲っていた。
黒い鉱山壁は、満月に岩肌を煌めかせている。
リシルは、光を受け、両手を組んで祈るユーステラを見つけた。
「森へようこそ」
「……リシル!」
穏やかな笑みを含んだ言葉に、ユーステラは弾かれたように顔を上げて振り向き、満面の笑みを浮かべた。
彼女の髪は、最初に会った時より長くなり、苔の上に広がっていた。
「助けてくれて、ありがとう」
「僕じゃない。森のみんなのおかげだよ」
「リシルも、そのうちの一人」
「……うん」
照れ臭そうに、リシルは俯いた。
「私はここに根付くことにする。とても良い所ね」
最初のコメントを投稿しよう!