満月の夜に

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カゲロウは、リシルを谷の奥へ運んだ。 細い川が真ん中に流れる両岸を、柔らかい苔が覆っている。その空間を隠すように、周りを断崖絶壁が囲っていた。 黒い鉱山壁は、満月に岩肌を煌めかせている。 リシルは、光を受け、両手を組んで祈るユーステラを見つけた。 「森へようこそ」 「……リシル!」 穏やかな笑みを含んだ言葉に、ユーステラは弾かれたように顔を上げて振り向き、満面の笑みを浮かべた。 彼女の髪は、最初に会った時より長くなり、苔の上に広がっていた。 「助けてくれて、ありがとう」 「僕じゃない。森のみんなのおかげだよ」 「リシルも、そのうちの一人」 「……うん」 照れ臭そうに、リシルは俯いた。 「私はここに根付くことにする。とても良い所ね」
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