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第01 神様はトンデモナイ間違いをした
昔から俺はモテた試しが無かった。
ある日の仕事帰りの途中、すれ違った学生達が近所の神社は、縁結びの効果が凄いと話してるのを聞いた。
俺は、ダメ元で近くの神社へ通い続けて1ヶ月、29歳に成ってやっと念願の彼女が出来た。
付き合い始めて2周間に成る、特別可愛い訳でも無いが、俺にとっては大切な宝物だ。
今まで神と言う存在は信じて居なかったが、もう10年早く神社へ通ってれば良かったのかとも思う。
「岬君、お待たせ」
「仕事、お疲れ様」
そう言った彼女は、顔色が悪い様だ、きっと今日の仕事が辛かったのだろう。
何か美味しい物をご馳走して上げたい、俺は彼女の笑顔が好きなのだから。
「あのね、話が有るんだ」
「ん?」
「私、同棲したいの・・・」
同棲!
行き成りの発言だ、でもお互いの年齢から言えば、急な展開だって有りかも知れない。
まだ手を握った位しか無いのに、行き成り同棲か神様万々歳だ、俺は既に彼女とのラブラブな同棲生活を想像していた。
「御免ね、そう言う訳だから別れて欲しいの」
「え? もう一度良いかな?」
「私、同棲したいの、同じ会社の憧れてた人から告白されて、一緒に住んで欲しいって言われたの、そう言う訳だから別れて欲しいの」
「ああ、そ、そうなんだね分かったよ」
彼女は、申し訳無さそうに頭を下げて立ち去って行く。
ううう、賽銭を返して貰いたい気分だ。
しかし、ここで神様を恨んでは行けないだろう、仕方が無く次の出会いを願うため神社へ向かう。
俺は千円札を1枚賽銭箱へ入れ、次の出会いを願った。
『もっと奮発するのだ・・・』
頭に響く声、それは目の前の扉から聞こえて来る。
俺は更に千円札を1枚入れて願った。
『もっと、もっとだ、さすれば願いを叶えてやろう』
振られたショックで、頭が可怪しく成ったのだろうか、幻聴かも知れない。
『願いは叶えなくて良いのか?』
俺は半分妬けで、彼女の為に何時でも使える様に用意していた、数十枚の1万円札を投げ入れ願った。
『願いはきっと叶うだろう・・・』
俺はバカな事をしたのかも知れない、気が動転して貴重な財産を、投げ込んでしまった事に後悔した。
独り寂しくコンビニの弁当を食べて、布団へ入る。
『小野寺 岬【おのでらみさき】、願いを叶えよう』
神様?
俺の心は、夢に見るまで致命傷を負っていたのか、寂しすぎる人生だ。
『早く願いを聞かせるのだ』
夢なら何でも有りか・・・。
「俺を、超イケメンに変えて欲しい、それで最高の美女と付き合いたい!」
『きっと叶えよう』
「オギャー、オギャー」
「フギャー、フギャー」
元気な赤ん坊の鳴き声と同時に、看護婦が扉から出て来た。
「小野寺さん、元気な双子の赤ちゃんが産まれましたよ、母子とも健康なので安心して下さい」
「双子ですか、有り難う御座いました」
俺は新しい母に抱かれて居るようだ、目は見えない、喋れもしない、しかし前世の記憶が残ってる。
『きっと叶えよう』
叶ったのか、俺は超イケメンに生まれ変わったのか!
既に持ってる記憶と、最高の容姿が有れば怖い物など無いではないか。
やはり神は信じる物だな、最高の人生を送ってやるぞ!
そう思っていたのも1年だけだった、何故なら俺達、いやいや私達は双子の姉妹だったのだから・・・。
私は岬、妹は雅美【まさみ】、神様よ、名前は同じなのに肝心な所を間違えてるじゃないか。
喋りたくても喋れない辛さ、走りたくても立てない辛さ、男を好きに成りたくても成れない辛さ。
私はと考えるのも嫌なので、僕と決めた辛さ。
色々な葛藤をしながらも、15年の月日を過ごした。
「雅美、行くわよ」
「うん」
『お母さん、お父さん行ってきます』
心配そうに、それでも明るく送り出して来れた父と母、僕達姉妹は日本で1番の高校へ進学する為、東京へ上京した。
福岡から東京へ向かう車内では、雅美が最近の口癖の様に言う、余程嬉しいのだろう。
「いやぁ 出来る姉だと助かるね、岬のお陰で私まで良い高校に入れたんだからね」
「僕のお陰じゃないよ、雅美が頑張ったからだよ」
決して僕のお陰じゃない、ただ生れ持っていた記憶のお陰なんだ。
自分と同じ顔だけど、僕は妹を好きでいる。
とても綺麗で可愛らしい、瓜二つなのに・・・美女に惚れてしまうのも記憶が残ってるせいだろうか。
数時間後、都内の小綺麗なアパートに付いたが、引っ越しのトラックは、まだ来てない様だ。
「雅美、大家さんに挨拶行こう」
「うん」
僕達は、101号室の大家さんを尋ねた。
扉をノックすると、とても綺麗なお姉さんが出て来た。
「今日は、これから201号室でお世話に成る、小野寺 岬です」
「妹の雅美です、宜しくお願いします」
「これはご丁寧に、このアパートの大家、石山花子【いしやまはなこ】の娘で管理人をしてます、純連【すみれ】です、宜しくね」
綺麗なお姉さんの笑顔は、とても眩しかった。
「綺麗な双子さんなのね、困った事が有ったら遠慮なく頼ってね」
凄く優しい人の様だ、出来る事なら付き合いたいと思ってしまう。
しかし、そんな事を言い出せば軽蔑されてしまうだろうな。
そこへ丁度、引っ越し屋のトラックがやって来た。
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