火星に行きたくありません

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数々の試練に勝ち抜いた人が火星に行ける。 面白そうだと思って、私、坂田功美子(くみこ)は軽いノリで応募してみた。 試練会場である指定されたフォーラムへ行くと、そこは既に大勢の人で賑わっていた。ざっと見て数千人はいるだろうか。 一体何の試練が行われるのか。私はドキドキしてくる。 司会進行の男性が出てきて試練の内容を告げる。 その試練とは、なんとジャンケン。 そんな適当に決めていいの? と、まず私は思った。会場にいる人たちも同じ思いのようで、とたんざわめき出す。 「それでは、今から出てくる人物とジャンケン勝負です」 そう司会が言って出てきたのは、なんと猫の着ぐるみ。 みんなあっけにとられていた。 笑う声や、馬鹿にしたような声が飛び交う。 私も思った。 猫の着ぐるみにジャンケンできるの? そもそもチョキとか作れるの? そんなざわめきも無視するかのように、司会は淡々と進める。 「はい。ジャンケン、ポン」 私はチョキだ。 その猫はパーだった。 つい勝ってしまった。 その後も別の着ぐるみが次々と出てきたけれど、私は何故かその全てに勝ってしまう。 負けた人が退場していくのを尻目に私はだんだん不安になる。 もしかして本当に火星に行ってしまうかもしれない。 別にそこまで本気で行きたかったわけじゃないのに。 そう思って私は急に焦りだした。 負けた振りしてこっそり出て行ってしまおうか。 そう考えた矢先に、不正だと警備員に言われ、出て行こうとした人が連れ戻されるのが見えた。 そこまで監視されてるの? そういえば、舞台の回りに監視カメラのようなものがある。 私はその時になって初めて恐怖した。
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