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「神様って本当にいるんだわ」
HOTEL KIRIGAYAの合格通知を握りしめ、依舞稀は天にも昇る気持ちだった。
まさか本当に合格するとは思わなかった。
採用試験会場には、見た目からして自分より優秀そうな人材がたくさんいた。
確かに依舞稀自身も学歴資格共に優秀ではあったが、30名の希望者のうち、3人しか採用枠がないという状況下の中で、まさか自分が選んでもらえようとは。
感謝しかない。
面接のときに見た社長は五十半だっただろうか。
とてもダンディーで清潔感もあり、とても格好のいい男性だった。
笑顔がとても魅力的で、人を惹きつける何かを持つというのはこういうことなのかと思わされた。
社長の息子の副社長は、商談で急遽面接を欠席することになったらしいが、きっと社長に似て素敵なのだろう。
今から入社が待ち遠しくてたまらない。
本当に舞い上がってしまいそうな足取りで、依舞稀は両親に採用通知書を見せにリビングへと急いだ。
親としては心配な面も多いだろうが、依舞稀の採用を両親は心の底から喜んでくれ、その日の夕飯はとても豪華なものになった。
面倒くさかったのは光星で、「俺も異動願いを出すよ。依舞稀と離れるなんて考えられない」と力説していたが、丁重にお断りしておいた。
内心、光星と距離を置く安堵感もあったのだ。
依舞稀は研修を理由に早々に引っ越し先を決め、本当に後を追ってきそうな光星から逃げるように家を出た。
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